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狂気と王権(井上章一 著)

狂気と王権(井上章一 著)
邪教を信じた元女官長による不敬事件、狂人と決めつけられた無政府主義者による皇太子狙撃事件、精神惑乱者とされる巡査にロシア皇太子ニコライが襲われた大津事件、狂える王ルードヴィヒ二世……。

「反・君主=狂人」というレッテル貼り、そして逆に反動勢力による「君主=狂人」の捏造など、独自の視点で「狂気と王権」の関係を考察するスリリングな近代史。
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摂政=皇太子が、狙撃される。しかも、公衆が見まもる、その眼前で。このことは、当時のひとびとに大きな衝撃をあたえた。陳腐な表現だが、日本中を震撼とさせたといってよい。(略)
正常な人間が、このような犯罪をするわけがない。やったのは、狂人にきまっている。いや、狂人であってほしい……。小川は、政友会の大物代議士でもあったが、そんな期待をもらしていた。

(「第二章 虎ノ門のテロリスト」より)
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◎Contents
▶︎第一章 オカルティズムと宮廷人
 元女官長の不敬事件
 高松宮の神政を霊示する
 入院は、検事総長が決定した
 島津ハルは「快癒」する
 天津教と神政竜神会は起訴された
 「皇室関係事犯者への常套的な処置」
▶︎第二章 虎ノ門のテロリスト
 皇太子をねらったステッキ銃
 「七度生まれ変わっても、大逆事件を繰り返す」
 ねがわくば狂人であってほしい
 「精神的には何等欠陥を認めず」
 脳解剖は狂気を立証できるか
 異常者のレッテルをつっぱねる
 事件をめぐる、もうひとつのうわさ
▶︎第三章 石と煙突のファナティケル
 ねらわれたパレード
 精神分裂症、そして二年の保護処分
 アブノーマルじゃないという医者がいた
 不敬罪観念の戦後史
 皇居をさわがすエントツ男
 抗議をうけた精神科医
「分裂気質」と「分裂病」
「精神病質」という概念に、歴史を読む
▶︎第四章 フレーム・アップができるまで
 皇室警備と「精神障害者」
「要注意者」のカードとプライバシー
 昔は、ちゃんと警戒したものだ
 いつから精神異常者はチェックされだしたのか
 狂人扱いを予感していたテロリスト
 田中正造の直訴はフレーム・アップされたのか
 狂気の捏造伝説ができるまで
▶︎第五章 ニコライをおそったもの
 司法の伝説と大津事件
 津田三蔵は西郷隆盛の帰還をおそれていた?
 津田三蔵ははたして正常だったのか
 当初は、「精神惑乱者」だといわれていた
 無罪の可能性をつたえる記事
 大津事件と虎ノ門事件のあいだ
 ソビエト政権と精神医学
▶︎第六章 相馬事件というスキャンダル
 藩主を座敷牢に幽閉する
 医学が不要だとされたころ
 診断書は、本人をみずに書かれていた
 司法精神鑑定へいたる道
「心神喪失者に罪は問えない」とされたとき
 精神医学、あるいはその社会史への可能性
 医学の権威がレッテルはりをもたらした
▶︎第七章 マッカーサーに語ったこと
「私は……全責任を負う」という物語
 ふたつの天皇像
 天皇に単独会見した男
 開戦に反対すれば……「独白録」は弁明する
 御用邸での御静養
「脳力」が「衰え」た……
▶︎第八章 皇位簒奪というイリュージョン
 二・二六事件と秩父宮の流言飛語
「蹶起の際は一中隊を引率して迎えに来い」
 平泉澄もうろたえた?
 秩父宮をとりかこむ警戒陣 ほか
▶︎第九章 ルードヴィヒの王国から
 海の向こうの狂える王
「人民」を皇室からきりはなせ
 プロイセンの内紛が明治憲法におよぼす影
「バイエルン憲法を典型として作成された憲法」
▶︎第十章 ノイシュバンシュタインの物語
 音楽から建築へ
 フランス絶対王政のまがいもの
 伊藤博文と君主権
 君主権の暴走をふせぐためのてだてとは?

原本あとがき
学術文庫版へのあとがき

ソフトカバー ダストカバー
□publisher:講談社学術文庫
□date of issue:2018年初版
□size:14.8x10.5cm
□page:335
□condition:経年なり・良好

» 評伝・ノンフィクション
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