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美の死 - ぼくの感傷的読書(久世光彦 著)

美の死 - ぼくの感傷的読書(久世光彦 著)
久世光彦が、自分自身の体験や感覚に引き寄せ、甘やかな〈感傷〉に潔く身をまかせながら綴った、書評および作家論67篇。

あとがきに「私の書く文章は、とにかくややこしいらしい。装飾過多で、比喩好きで、もって回って漢字が多く、めったに改行しない」と自戒しているように、けっして読みやすい文章ではないが、読書を通じて人間の内奥を見つめようとする眼差しの強さに心惹かれる。
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ちょっと乱暴かもしれないが、世のすぐれた小説の多くは、少女小説ではないかと、私は思っている。川端康成の「眠れる美女」は少女小説である。太宰なら、「斜陽」も「道化の華」も、紛れもない少女小説である。バルザックには「谷間の百合」があり、ノヴァーリスには「青い花」があり、トルストイの「アンナ・カレーニナ」は、ペテルブルグの雪に滲んだ深紅の少女小説だった。そして、三島由紀夫も、少女たちが密かに動悸しながら読んでくれることを熱く願いながら、あの几帳面な文字で原稿用紙の枡を埋めていったに違いない。

(「美の死 ー 三島由紀夫」より)
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◎Contents

《名文句を読む》
女の〈片腕〉との対話  川端康成「片腕」
いつもの時刻  内田百閒「サラサーテの盤」
桜色の恋物語  川上弘美「春立つ」
キー・ワードは〈小〉  川口松太郎「櫓太鼓」
葉子  大岡昇平「花影」
死への眼差し  清岡卓行「海の瞳」
蛍は三度現れる  織田作之助「蛍」
老いてなお  岡本かの子「老妓抄」
〈感傷〉の大旗  福永武彦「草の花」 ほか
《気になる本》
滅びの歌  江藤淳『南洲残影』
囁きの物語  皆川博子『ゆめこ縮緬』
この人の吐息  小池真理子『蜜月』
遠い日の欲望  町田康『屈辱ポンチ』
匂いたつ言葉たち  高樹のぶ子『透光の樹』
奇妙なバランス感覚  井上ひさし『東京セブンローズ』
「いい歌ですね」  庄野潤三『庭のつるばら』
声  筒井康隆『わたしのグランパ』
産室の光景  谷川俊太郎『和田夏十の本』
あなたはいつか桃色の骨になる  瀬戸内寂聴『場所』 ほか


美の死  三島由紀夫
生勃えの戯れ唄  吉行淳之介
風の童話  小川未明
光あふれる文学  川上弘美
ひとすじの流れ  幸田文
青醒めた月  男の子にとっての中原淳一
瀕死のエトランジェ  小沼丹
太宰元年  太宰治
「眼中の人」の謎  小島政二郎 ほか


愛人の肖像  なかにし礼『愛人学』
焼け跡のマリア  柳美里『家族の標本』
私はゾクリと慄えた  水原紫苑『客人』
松浦寿輝と志賀直哉  松浦寿輝『花腐し』
いつか見た青い空  山田風太郎『戦中派虫けら日記』
奇蹟の書  野溝七生子『眉輪』
水の色気  岡本綺堂『半七捕物帳』
歳月  森繁久彌『もう一度逢いたい』 ほか

絶版または版元品切れ
ソフトカバー ダストカバー
□publisher:ちくま文庫
□date of issue:2006年 2刷(2006年 初版)
□size:15x10.5cm
□page:334
□condition:経年なり・普通 カバースレ汚れ傷み上端ヨレ

» 随筆・エッセイ
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