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愛猿記(子母澤寛 著)
誰からもつまはじきにされ、檻のなかで猛り狂っていた大猿が、著者・子母澤寛だけには、なぜか出会ってすぐに懐いてしまう。
情にほだされ、「三ちゃん」と名付けて、二代目、三代目と飼いつづけた著者と猿との十数年の日々を綴る6篇と、犬、カラス、小鳥との交流を描く5篇を掲載。人と動物はここまで情を通わせあえるのかと、胸をうたれるエッセイ集。
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私がこの猿を抱こうとした時だった。猿はいきなり、ぱッと飛上り、私が鎖をしめる隙もなく私の肩へ乗って終ったものである。その早い事、早い事――。肩へのって、両手で私の頭へしがみつく。
私が動悸ッとしたばかりでなく、みんなも思わずあッと声を出した。お互にどうなることかと思ったのだ。家内などは後で、ぞうーっとして物が見えなくなったといった程である。
私は手を上げて猿の顔へさわり乍ら、
「よし、よし。お前もう大丈夫だよ。お前を苛める奴はいないから、安心して何でも好きな事をやっていいよ」
立ち上る。どっしりと重みを感ずる程の大猿である。
(「愛猿記」より)
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◎Contents
愛猿記
猿を捨てに
悪猿行状
嫁えらび
三ちゃん追悼記
追慕
ジロの一生
チコのはなし
犬と人との物語
カラスのクロ
野鵐ばなし
解説:綱淵謙錠
偏執狂的な風景 愛猿記―子母澤寛(土門拳)
ソフトカバー ダストカバー
□publisher:中公文庫
□date of issue:2021年 初版
□size:15x10.6cm
□page:329
□condition:良好
» 随筆・エッセイ
https://narda.thebase.in/categories/1326663
情にほだされ、「三ちゃん」と名付けて、二代目、三代目と飼いつづけた著者と猿との十数年の日々を綴る6篇と、犬、カラス、小鳥との交流を描く5篇を掲載。人と動物はここまで情を通わせあえるのかと、胸をうたれるエッセイ集。
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私がこの猿を抱こうとした時だった。猿はいきなり、ぱッと飛上り、私が鎖をしめる隙もなく私の肩へ乗って終ったものである。その早い事、早い事――。肩へのって、両手で私の頭へしがみつく。
私が動悸ッとしたばかりでなく、みんなも思わずあッと声を出した。お互にどうなることかと思ったのだ。家内などは後で、ぞうーっとして物が見えなくなったといった程である。
私は手を上げて猿の顔へさわり乍ら、
「よし、よし。お前もう大丈夫だよ。お前を苛める奴はいないから、安心して何でも好きな事をやっていいよ」
立ち上る。どっしりと重みを感ずる程の大猿である。
(「愛猿記」より)
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◎Contents
愛猿記
猿を捨てに
悪猿行状
嫁えらび
三ちゃん追悼記
追慕
ジロの一生
チコのはなし
犬と人との物語
カラスのクロ
野鵐ばなし
解説:綱淵謙錠
偏執狂的な風景 愛猿記―子母澤寛(土門拳)
ソフトカバー ダストカバー
□publisher:中公文庫
□date of issue:2021年 初版
□size:15x10.6cm
□page:329
□condition:良好
» 随筆・エッセイ
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