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晩年の父(小堀杏奴 著)

晩年の父(小堀杏奴 著)
☆2024.5.4 再掲
森鴎外の次女である小堀杏奴が、1936年に刊行した初の随筆集。この作品によって文才を世に広く知らしめた著者は、随筆家としてのちに多くの作品を残すこととなった。

表題作「晩年の父」は、鴎外の死の直前の約1年間の思い出を、14歳の少女の繊細な目を通して綴った作品。「パッパ」「アンヌコ」と呼びあう二人の間に通う、細やかな愛情に胸を打たれる。

他2篇「思出」「母から聞いた話」も、家庭人としての鴎外の横顔を綴ったもの。いずれも、著者ならではの穏やかな筆致のなかに、内に秘めた強さを感じさせる作品となっている。

岩波文庫として刊行するあたり、「あとがきにかえて」と題して、1979年に雑誌『諸君!』に掲載した「はじめて理解できた『父・鴎外』」を巻末に加えている。

岩波文庫がカバーなしだった時代に刊行された初版。
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その年、毎晩夜になると、父は星を見に家の前の川岸に出掛けた。母も弟も詰らながってついて来ないので、私一人が毎晩一緒に行った。
提灯に灯をつけている父の背中から私は寄っかかるようにして聞いた。
「パッパ、何してるの?」
「星を見に行くんだ。アンヌコも一緒に来るか」
父は私を「アンヌ、アンヌ」と呼んだ。そして愛称の意味もあるのか、アンヌにわざと「コ」を付けて、「アンヌコ、アンヌコや」などといってふざけた。

(「晩年の父」より)
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◎Contents
晩年の父
思出
母から聞いた話
あとがきにかえて
— はじめ悪しければ終り善し

ソフトカバー 帯あり グラシン紙なし
□publisher: 岩波文庫
□date of issue:1981年 初版
□size:14.8x11cm
□page:223
□condition:経年なり・普通 三方ヤケ

» 随筆・エッセイ
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